遠近両用レンズとは、遠くの度と近くの度がひとつのメガネの中に入っているものです。
遠く用の度はメガネの上の辺りに、近く用の度はメガネの下の辺りに入っており、その度数の差を加入度といいます。
遠近両用レンズは多重焦点レンズ(図1)と累進レンズ(図2)に分けられます。
多重焦点レンズとは、遠く用の度と近く用の度が完全に分かれたタイプで、メガネレンズの中に境目(窓)があるタイプの物です。
累進レンズとは多重焦点レンズにある境目をならして、遠く用の度数から近く用の度数へ徐々に変え、境目のないレンズに仕上げたものです。その徐々に度数を変化させる事を累進といいます。
それぞれには利点、欠点があり、多重焦点レンズには、
・遠くと近くがそれぞれ専用の度数で、見え方がすっきりする
・境目の外と中でそれぞれ遠く用の度と近く用の度が分かれており、どこでそれぞれの距離を見れば良いのかが分かりやすい
という利点があります。反面、累進レンズには、
・境目が無く、他人にそれがいかにも遠近レンズだと思われにくい
・境目が無く、スムーズな視線移動が出来る
・遠く用の度と近く用の度をならしたときに1メートル前後の距離が見やすい中間用の度が出来る
という利点があります。言わずもがな欠点はこれまでに述べた反面となりますが、多重焦点レンズの中で、中間用の度が入った3重焦点レンズ(図3)という物もあります(ただし、中間用の度数の範囲は非常に狭く、通常はあまりおすすめしません)。
さて、遠近両用レンズはひとつのメガネレンズの中に「境目が無く、遠くも近くも見られるレンズ」ということがお分かり頂けたと思います。しかしながら、遠く用の度数と近く用の度数を1枚のレンズに詰め込むというのは、実は大変無理がかかることなのです。
遠近両用レンズの中に、多重焦点レンズがあるとお話しましたが、その境目を度数を変えずになくすという作業となります。
その無理が原因で累進レンズの周辺部にはボケたり歪んでしまったりと、「みにくい部分」がどうしても出来てしまいます。その「みにくい部分」の影響で累進レンズがなれにくいという問題が出てしまうことがあります。
累進レンズの見やすさの指標として、レンズメーカーが見やすさ曲線(図4)などというものを出していることがあり、視線からみた曲線の幅が広いほどボケや歪みの少ない見やすいレンズということがイメージとして分かりやすくなっています。
図4:見え方曲線の一例
累進レンズは歪んで慣れにくいと述べましたが、出来るだけ見やすくするために各社は努力をしてくれています。
見やすい累進レンズにする方法として、
・どうしてもボケてしまう部分を出来るだけはっきりさせる
・歪みを極力減らし慣れやすくする
といった方法があり、累進レンズの発売された当初(1960年頃)と比較すると見易さは格段に改善されているといいます。
(先日製造中止となった1990年代中期に発売されたレンズのサンプルと、2009年に発売されたレンズのサンプルでは、筆者には見え方が格段に違って見えました)
各社がそれだけの努力をしてくれも、出来るだけはっきり見えるようにすると歪みが強くなってしまい、歪みを減らしてあげると少しぼけてしまうといった形になってしまいます。そこで、2005年頃発売された両面設計という考え方が生まれました。
今までの累進レンズは、表面ないしは裏面の片面だけに累進の要素を持たせていました。例えるなら、表面と裏面の二人がいるのに荷物を片方に持たせていた様なものだったのです。
新しい考え方の両面設計では、累進の要素を両方に持たせませした。荷物を二人で分担させると、全体的な荷物の量は変わらなくても効率が上がります。その為、今までのレンズと比較すると「すっきり見える上に歪みも少ない」ということが可能になったのです。
見え方が画期的によくなった反面、高い技術力が必要となり価格は高くなってしまったため、当社でも片面累進レンズの取り扱いはあり、むしろ片面累進レンズの方が販売比率は高いという状況ではあります。当ページでは遠近両用レンズについてと、累進レンズの金額の差がなぜ生じるのかが理解して頂ければ幸いです。
(江崎筆)